先日(2026年10月30日)、埼玉県羽生市にある株式会社タカミヤの実証型農業イノベーション拠点「TAKAMIYA AGRIBUSINESS PARK(TAP)」で開催された農業イベント「TAP EXPO 2026」に参加してきた。このイベントは「農業版シリコンバレー」を目指し、農業界の課題解決に向けた異業種共創をテーマにしたものであり、広大な屋外実証フィールドを活用した様々な次世代農業ソリューションが展示されていた。
その会場でひときわ目を引いたのが、ベルグリーンワイズによって実証実験が進められている保湿冷蔵コンテナ「モイスト・クールシステム」である。現地では、ブロッコリーや大根、桃などを用いた7長期保管実験の比較などが展示されており、その鮮度保持能力に衝撃を受けた。
本記事では、このモイスト・クールシステムとは何か。どんな流通革命が起きるか考えたい。

ベルグリーンワイズについて
株式会社ベルグリーンワイズは、愛知県名古屋市に本社を置き、青果物や食品の鮮度保持包装資材の企画・製造・販売を主軸とする企業である。
同社の代表作とも言えるのが、2009年に発売された高鮮度保持フィルム「オーラパック」シリーズである。このフィルムは、青果物の細胞に含まれる水分子を単分子化して循環を促す「水分子活性機能」、水滴の付着による腐敗を防ぐ「高い防曇機能」、そして最適な呼吸環境を保つ「通気透湿調整機能」を備えている。数十年にわたりミクロな包装空間の環境制御を突き詰めてきたこの技術とノウハウが、空間全体を制御するモイスト・クールシステムの開発へと繋がっている。
モイスト・クールシステムとは
鮮度を極限まで保つ独自の仕組み
一般的な冷蔵設備は、乾燥した冷気を局所的に吹き付けるため庫内に温度ムラができやすく、青果物の水分を奪って乾燥させてしまうという弱点があった。 これに対し、モイスト・クールシステムは以下の特徴的な構造を持つ。
- 温度と湿度の独立制御:温度(0℃±0.5℃)と湿度(95%±5%)をそれぞれ独立してコントロールし、氷点下に近い環境でも安定した高湿度を維持する。
- 直接接触冷却技術:低温・高湿度の冷気を天井一面から穏やかに供給。風速を下げつつ大風量で包み込むように冷却するため、青果物を乾燥させずに素早く品温を下げ、鮮度低下の原因となる「呼吸活性」を早期にストップさせることができる。

具体的な鮮度保持の事例(試験実績)
システム単体だけでなく、ベルグリーンワイズが開発した鮮度保持フィルム(オーラパック等)と組み合わせることで、以下のような長期間の保存が実証されているという。
- ブロッコリー:モイスト・クールシステムで78日間保管。一般的な冷蔵庫では数日で黄色く変色するが、鮮やかな緑色を長期間維持。
- 枝豆:36日間保管。枝豆特有のさやの褐変(茶色く変色すること)や、しおれを長期にわたって抑制。
- 馬鈴薯(ジャガイモ):「スノーマーチ」や「メークイン」といった品種において、108日間という長期の保管に成功。
- 軟弱果実(いちご・さくらんぼ):傷みやすくカビが発生しやすい果実だが、22日間の長期鮮度保持を実現。
- カーネーション(生花):青果物だけでなく生花においても、37日間保管して花のしおれを強力に抑制する効果が確認されている。
その他、オプションで「キュアリング機能」を搭載することができる。


実現後に起こる流通革命や期待すること
モイスト・クールシステムの普及によって期待される「流通革命」について、物流問題や現場の課題解決の視点から個人的に期待することを考えてみたい。
「物流の2024年問題」の克服とモーダルシフトの実現
現在、トラックドライバーの残業規制強化に伴う「物流の2024年問題」により、長距離輸送が多い農産物の輸送能力不足は3割以上にのぼると推計されている。集荷場や市場での長時間の荷待ち・荷降ろしが敬遠され、撤退する輸送業者も少なくない。
この解決策として、一度に大量輸送ができる貨物列車や船舶への「モーダルシフト(輸送手段の転換)」が求められているが、これらはトラックよりも輸送日数が長くかかる(リードタイムが長期化する)という弱点があった。コンテナ型のモイスト・クールシステムを活用すれば、この長期化する輸送期間中も鮮度を保つことができるため、無理なくモーダルシフトへの移行が可能となり、同時にCO2排出量の大幅な削減も実現ができると考える。
完熟流通と「豊作貧乏」の回避
日本の青果物は、産地が消費地から遠いこともあり、流通過程で廃棄される農産物が多い。また、天候に恵まれて作物が獲れすぎた際には、市場に供給が溢れて価格が暴落する「豊作貧乏」が生産者を苦しめてきた。
モイスト・クールシステムによって保存期間が従来以上に延びることで、生産者は「獲れた時に急いで安く売る」必要がなくなり、保管して需要が高まる最盛期に合わせて出荷する「戦略的な出荷調整」が可能になる。さらに、輸送中に熟しすぎるのを恐れて未熟な状態で収穫していた果実なども、産地で完熟させて一番おいしい状態で収穫し、そのまま消費地へ届ける流通も考えられる。
選果場・パッキングセンターでの「働き方改革」
青果物業界の隠れた課題として、選果や梱包を行う低温環境下での過酷な労働環境がある。一般的な保冷庫は空気が乾燥しているため、働く人にとって寒さがより厳しく刺さるように感じられ、体調への負荷や人手不足の一因となってきた。
モイスト・クールシステムは空間を「高湿度環境」に保つため、同じ0℃前後の低温であっても、冷気が体に突き刺さるような過酷さを感じさせにくいという特徴がある。これにより、働き手に優しい労働環境を提供でき、職場環境の改善という面でも期待できる。

気候変動による夏の猛暑や異常気象など、農業を取り巻く環境は年々厳しさを増している。しかし、ベルグリーンワイズが培ってきた包装技術と空間制御技術は、間日本の青果流通の構造を変革するポテンシャルを秘めていると感じた。生産者が心を込めて育てた「野菜」が、一つ残らず高いレベルの鮮度で食卓に届く。そんな農業の未来が、すぐそこまで来ているのかもしれない。
詳しくは下記のホームページに載っているので、興味がある方は見てみて欲しい。
モイスト・クールシステム |“ 野菜を宝石に ” 青果物の鮮度保持に最適な環境を作る鮮度保持冷蔵システム【モイスト・クールシステム】
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